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思い出すなあ。このお店がまだ前身の、昔ながらの街パン屋さんだったころ。 受験のために上京した私は、ここのほんのそばで一人で過ごす長い長い時間、途方にくれた。 不安、期待、感じたことのない雑踏のスピード。 私にいたずらな地元礼賛の気質はないし、心から東京が好きだし楽しいと思っているけれど、 ‘何も始まっていない’自分、誰も知る人のいない土地、というのは 10代の自分には途方を知るに十分な要素だったと思う。 暗い夜が明けて街街を洗ってゆくかのような、 静かに清めてなぞっていくような、あの光は確かに一瞬、 永遠と錯覚するようなさまを見せてくれたようにも思う。 ‥さて、あれから約十年(イヤーン、、)。 街パン屋さんはかわいらしい雑貨屋さんのようなお店へと。 カレーパン、クリームパン、その他お惣菜パンに菓子パン。 店の雰囲気は激(だと思う、確実に)変しても、 なんとなーーくラインナップは街パン屋さんちっく。うーん‥。 しばし迷いつつ、いくつかを購入。 ミルク生地にモッツァレラ、プチトマト二つ、バジルペーストをいれこんだ プチモッツァレラトマト。 生地はしっかりとミルクの甘い香りがして、ソフトな食感。 うーん、、個人的な好みでいうと、このたっぷりとしたチーズに トマト×バジルの風味はバゲット地やセーグル地で楽しみたかったかも‥? 若干ミスマッチな印象なんだよなあ。。でも個人の好みなので、 この組み合わせがどうしようなくラブ!という人も無論たくさんいらっしゃるでしょう。 フランスパン地のうぐいす豆。 細めのバトン状ながら、気前よく入った大粒のうぐいす豆がうれしい。 ライ麦地にラムレーズンとアーモンドが入ったアマンドレザン。 これもたっぷり入ったアーモンドがうれし。 一番好きだったのは曜日限定の焙煎五穀ブレッド。 香りはすこぶる香ばしく、食感はなめらか。 和も洋的なものも、ワインも受け止める。 ワインはギュファン・エナンのオーナーによるシャトー・デ・トゥレット、 ギュファン・ブラン アンタンデ 2006。 シャルドネ80%、ヴィオニエ20%。 しっかりとした骨格、あふるる凝縮感に樽香。 かといって、いい意味で重々しさはなくて。 おいし(く手頃な価格の)いワインといただきつつ、 とある遠い日を思い出すパンを食す(単に場所的に、だけど)。 すべての人に、積み重ねた月日のあることの素晴らしさ。 途方のない多様と複雑の世界に、微々でも確かに存在することのかけがえのなさ。 ‥で、それをパンとワインでとくとくとオモフ自分‥バンザーイ(笑)。
by breadandmore
| 2009-03-10 00:26
| パン(都内)
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